  はい、存在します。確かに、道徳そのものは人間社会に特有の人工的な智慧（ちえ）の構築物であるため、地盤が緩い「砂上の楼閣（ろうかく）」みたいなイメージがありますが、その源流を辿（たど）れば「大自然や宇宙」に端を発しているのです。これは、決して怪しげな神秘主義や新興宗教の言説に依（よ）るものではありません。 大自然に触れたり宇宙を感じたりするとき「自分は、なんて ちっぽけな存在なのだろう」と素朴な心情を吐露（とろ）した経験はないでしょうか。実は、そのことだけでも既に道徳の基本的な原理である「謙譲」や「謙虚」、「謙遜」などの心性（センス）が養成されています。これは単にサイズの問題ではなく、「母なる大地・大海・大空」とのスケールの違いとでもいうべきものを直覚的に肌で感じ取ったと言えるでしょう。きっと、尊大で横暴だった自分が「裸の王様」や「御山（おやま）の大将」に思えてくるはずです。 人間同士の醜い利害の対立で自分を見失いそうになったときは、是非とも視界を広げ森羅万象（しんらばんしょう）に意識を向けることで、道徳心を取り戻してください。「世界は、あなたや人間のためだけのものではない」ということ、「道徳は、他者や大自然と『共存共栄』していくための叡智（えいち）である」ということを。そして、私たちは皆、地球という星から産まれたことを片時も忘れてはいけません。 |
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