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〜 プチ術語集 (倫理&哲理) 〜


はじめに: このコーナーでは、倫理や哲学をより深く理解するために必要で興味深い専門用語を紹介したいと思います。主な引用は倫理用語集(山川出版社)・哲学小辞典(岩波書店)・現代思想フォーカス88(新書館)からさせて頂きました。より詳しく勉強したい方はそちらをご参照ください。
哲学
世界や人生が全体として何であるのか、その意味や目的の根本について考える学問。実証的な研究をする科学に対して、哲学はそれらを大きく包み込み「価値判断」を下す。真・善・美や、神・心・時空・自我など主に形のないもの(形而上)を扱うゆえ、宿命的に物証はないが歴代の偉大な科学者たちは崇高な哲学(理念)を持っていた。
哲学学
またの名を「文献哲学」という。学術用語として認知されているかは定かでないが、平たく言えば哲学史を学ぶこと。自分の頭で物を考えず、先哲からの受け売りの知識だけで理論武装して哲学を語る研究者や学生を揶揄する言葉としても使われるが、哲学学は尊敬に値する根幹的な営為であり軽視すべきではない。
倫理
社会や共同体などの中で通用している規律やルール。習慣や習俗の集積が人道として実を結ぶ。
道徳
人として守るべき行動の規範やルールを身につけること。倫理が理法なら、道徳はその主体的な態度をあらわす。座学に留まらず、実践的に人間性を磨き、人格を形成すべし。
思索
知識を蓄積するための「思考」ではなく、人生の意味や目的の方向性について思いを巡らし、それらを共有できる知恵の形にするよう努めること。
超自我
スーパーエゴ。精神分析学の用語で、両親からの躾で形成された良心(・(…駄洒落?)。欲望に動かされる自我を厳しく監督し、抑制する。その形成が不十分な青年は、自分の衝動が抑えきれずに非行や反社会的行動へ走りやすい。
三無主義
無気力・無関心・無責任という青年が陥りやすい意欲をなくした3つの傾向。無感動を加えて、四無主義ともいう。また、受験の後に目標を見失い勉学や学校生活に対して意欲を低下させる現象をスチューデント・アパシーという。
宇宙船地球号
地球を宇宙船のような閉ざされた環境にたとえ、環境問題への新たな取り組みの視点となる世界観を示したもの。地球上の全ての人間が同じ宇宙船の「乗組員」という意識で、自然環境の保全に取り組むことを目指す。
ニヒリズム
虚無主義。既成の価値観や権威を全て否認・破壊しようとする立場。人生の目標や意義を見失って享楽や絶望に逃避する「受動的ニヒリズム」と、無意味な人生でもその悲惨さを直視し、乗り越えようとする「能動的ニヒリズム」がある。
奴隷道徳
社会的強者に対する嫉妬心を持つ弱者たちが、せめて道徳面だけでも優位に立とうとして同情や博愛、謙遜・従順・平和などの本来は有用な価値観を悪用する背徳的行為。徒党を組み悪平等を押し広めようとする様は、まさしく奴隷精神の顕現。他方、自己研鑽・自己肯定・自己賛美を奨励するのが貴族道徳であるが、これは…道徳と呼べるのか…?
(神の)見えざる手
各人が自らの利己心に従って営利を追求する経済的な自由競争は、「見えざる手」という名の経済法則に導かれて「自然に」需給を安定させ、社会全体の富を増幅させるという思想。個人と全体の利益の自然な調和を説くが、市場もそれを制御する政府さえも長期的には「失敗」するのであった。人為の集合に対して「自然に…」などという表現は、そもそも無理があるのかもしれない。
芸術のための芸術
芸術は道徳その他の美目的以外のためではなく、美を唯一の目標としてそれ自体のために創られるべきだという考え。芸術至上主義とも言い、人生観としては唯美主義に通じる。芸術傾向としては形式主義的となり、背徳の擁護にもなりうる。
国学
古事記・日本書紀・万葉集などの日本の古典を文献学的に研究し、日本固有の精神文化の究明に努めた学問。実証的な自由研究や自然な人間性の大切さを明らかにし、本居宣長によって大成されたが、儒学(儒教)への対抗意識が強すぎたため復古的・排外的になり近代的学問として成長することはできなかった。
メタ倫理学
道徳上の規範(実例)を明らかにすることが倫理学の中心問題であるが、そのような規範的倫理学に対して、道徳的判断&価値判断の根拠、正当化の手法、善悪の概念の意味などを解明しようとする学問。
対人論証
人柄や地位などを根拠にして、その人の主張の当否を断定しようとすること。論理的には虚偽であるが、正しい理論を「経験」から納得させることは、現実社会において不可欠である。
アフォーダンス
「可能性」を提供する意味&価値を持った環境。我々が環境に働きかけるというより、環境が我々に働きかけていると考える。ただし、認識する生物の側が存在しなくとも、潜在的・客観的・生態学的に実在していることに変わりはない。我々が知覚するかしないかは問題とせず、坂は「登れる」ことをアフォード(提供)し、椅子は「座れる」ことをアフォードしてくる。
群衆
血縁や地縁によらず、公衆のような共通の社会規範も共有しない奇妙な人間集団。感情的な雰囲気に流されやすく、一定方向の扇動や誘導に成功すると、巨大な行動的エネルギーを発揮する。衝動性・無批判性・被暗示性・単純性・模倣性・同一性・他人志向性などのネガティブな心理学的特徴を持つが、社会的・政治的勢力としても有力で、抑圧状態からの解放や共同体秩序の再活性化といったポジティブな機能も有する。
消尽
生産→交換→消費→再生産の回路を打ち破る「純粋な贈与」。自己の所有する力と資源を瞬間的に使い尽くすこと。有用性や満足の次元を突き抜けた先には「異質なもの」へと開かれていくエロティシズムが待っている!?
ホーリズム
全体が単なる部分の総和には還元されず、部分の考察は全体との関係で捉えなければならないとする考え方。科学(科目の学問)に対する全体学。全体が単なる部分の総和にすぎないと考えるアトミズムや、部分を捉えることだけで全体を説明しようとする還元主義と対立する。事態に一対一対応した命題が検証によって単独に確かめられるという考えそのものを誤りとみなし、形而上学と物理学の差を真偽ではなく「経験を説明するときの効率性や有用性の優劣」に求める。
野性の思考
未開人の思考を非合理的なものと見る通念を斥け、文字や機械のない社会における思考も、自然環境の綿密な観察に基づく精緻な体系を持つことを示す考え方。文明社会においても、持ち合わせの材料の組み換えによって問題を解決する点に同様の特色があり、詩や芸術において重要な役割を果たすとも説いている。
観想
感覚的知覚で到達しえぬ真理(形而上学や数学)を「眺めること」を意味する実践や制作とも区別された概念。快を目的とする享楽的生活、名誉を目指す政治的生活、富を求める営利的生活に対して、真理をそれ自身のために眺める「観想的生活」を真の幸福と考える。






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